とある公立病院のコロナ専門病棟の話

マレーシアの医療
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21年7月末頃からなのですが、長女あーちゃんが研修医として働いている公立病院が、コロナ専門の医療機関となりました。マレーシアのコロナ感染爆発で、医療崩壊の危機に瀕した対応です。
マレーシアで身内がガチで医療系フロントライナーな日本人は少ないと思いますので、聞き出した話をここにこっそり、守秘義務に抵触しない範囲で書こうかと思います。

書いて大丈夫か?

マツムラ
マツムラ

やばくなったら消します。

元々はどうだったのか

病院ではコロナ患者のアクセス度合いにより、レッドゾーン、イエローゾーン、グリーンゾーンと区分けをし、アクセスは厳しく管理されています。

あーちゃんが研修医として働き始めた21年4月頃は、まず、外来病棟での受診者は、入口の外にある簡易検査場で、来院目的の確認、発熱・コロナ的症状の有無の確認が行なわれました。

コロナが疑われる患者は検査に進みます。
この検査が行なわれるのがイエローゾーン。

簡易検査で陽性だった患者はレッドゾーンへ誘導され、症状によって隔離センターまたはコロナ専門医療機関での入院へ振り分けられていました。
面積で言うと、このレッドゾーンが外来の約10%、換気のできる外部に面した部屋。
イエローゾーンは約20~30%、
その他はグリーンゾーンと呼ばれ、ほやほや研修医はそのグリーンゾーンの一般病棟で勤務しておりました。

医療崩壊の始まり

ところが、マレーシアでの感染爆発とともに、レッドゾーンが瞬く間に拡大し、グリーンゾーンが10%に縮小するまでとなりました。

あーちゃんも夜勤でER(緊急救命室)のオンコールになる事がありますが、コロナ感染患者の搬入も増加していたそうです。

21年6月辺りには、首都圏のコロナ受入れ医療機関のICUは満床となり、レベル5(最も重症)の患者さえ受け入れることができない、という事態に発展していました。

そして、冒頭に記載した通り、7月末にはあーちゃんの勤務先がコロナ専門病棟となりました。心臓外科のある病院なので、その患者さんの搬送先手配に時間を要した為、他の公立病院よりは少し遅くの変換だったそうです。

勤務はどうなったか

勤務時間だけを見ると、意外かもしれませんが、一般病棟勤務の方が、拘束時間は長かかったです。
一般病棟はありとあらゆるケースが持ち込まれ、対応に時間がかかり、日勤なのに残業23時まで、とか、ザラにありました。逆に、コロナ病棟になってからの方が、やることがほぼ同じなので、勤務時間も安定しています。 

ただ、PPE(防護具)フル装着の為、毎日サウナに入りながら歩き回っているようなもので、服は絞れるほど汗でびっしょりになります。

ほやほや研修医はICUは担当することは無く、症状レベルの4(酸素吸入が必要)、またはレベル2や3で高血圧や心疾患など重症化しやすいがために入院できた患者を担当しているそうです。

小児患者

症状のレベル1・2と分類される無症状・軽症患者は、現在は自宅隔離となっています。家庭内できちんと隔離していればよいのですが、そこはマレーシア。食事はいつも通り家族と一緒にに取ったり、そもそも部屋に籠っていない、などのケースも多く、結果、子供にうつり病院に駆け込む患者家族が絶えないそうです。

我が子の出産時の事を覚えていますか?

小児の場合、特に必要な情報が、
・早産だったか、臨月の出産だったか
・正常分娩か、また、産後に何か問題があったか(ICUに入った、とか)
・出生時のおおよその体重 等
だそうです。

愛する我が子の1年前の事、なのに、その質問をすると、きちんと答えられず、
「ええと、多分…」という、回答になっていない回答が多いそうです。
たかだか1~2年前の話ですよ。
まぁ気持ちはわかります。私も突然聞かれたら、「え? 今それ聞くの?」と、やはりひるみ、一瞬、視線は泳ぐと思います。
まぁウチの場合、3人が3人とも予定日過ぎてたし、体重は皆3kg前後だったので、20数年経った今でも、ひと呼吸おいたら回答できます。

が、世の中にはこれほどまできちんと答えられない父親はおろか、母親も多い、と、嘆いていました。

これを読んでいる日本人で、こういう状況に該当することになる人がいるとは思えませんが、もし小児連れでしたら、この辺りの事を思い出しておくとよいでしょう。

人間関係がややこしい

ここからは少し下世話な話です。

改宗していたの?

緊急入院の場合、IC(身分証明書)等の提示が後回しになる事があります。

その中華系に見える患者さんは意識がほぼ無く、IC等も不携行でした。手当が落ち着いたので、カルテに走り書きされていたご両親の番号に連絡を入れ容態をお知らせし、患者さんの氏名・年齢などを聞き出しました。

見た目はまごうことなき中華系でしたが、両親から聞かされた名前はイスラム教の氏名でした。改宗されたのですか?と質問したら、そうなんですよ、私たちは反対したし、まだ賛成していないんですけど愚痴愚痴愚痴愚痴…だったそうで、いや、そんな話聞いている暇ないよ、という事件だったそうです。

これ、別にコロナとは無関係じゃね?

これだから一夫多妻は…

齢50歳前後のマレー系男性が入院しました。酸素吸入必要なレベルで、意識はありません。
彼には妻が二人おり、妻がそれぞれ、夫の様子を1日に何度も問合せるために電話してきました。そりゃ、多忙な医師も看護師も切れますわな。同じ人間に対する同じ質問内容を繰り返し別の人に説明しなければならないのですから。

そこで、あちこちから何度も入電するな。誰か1人、窓口を決め、その人が1日に1度電話するにとどめるよう、かなり強く要請し、さもなくば同日2人目以降は対応しない、と強く言い切ったそうです。

そこで登場したのが、従弟だかはとこだか、2親等より離れた人物。
ところが、医師・看護師としては、直接の家族以外には守秘義務があり、容態を知らせることができません。
とはいうものの、妻1号2号間で折り合いついていないようで、仕方なく、(本当はルール外だけど)少し遠めの親戚が容態連絡窓口になったそうです。

死亡の場合とか、めっちゃ揉めそうですね。

ご存命です。

少し落ち着いてきたとはいえ

21年9月になり、ICU占有率等は減少してきました。マレーシアの政策もいかにコロナと共存するかという方向へ舵を切り始めています。

とはいえ、安全とはまだほど遠く、病床にもまだ限りがある状況に変わりはありません。
ワクチン2度接種が完了し、2週間経過した人に許可される活動は増えていますが、あくまでも経済を回すことが第一義の政策ということは忘れずにいたいものです。

マツムラを昔を知る者から見ると、言う事がずいぶん保守的になったよね

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マツムラ

マツムラ

マレーシアに住んではや●●年の永遠の28歳(痛っ!)。 日系メーカーの現地法人に勤務中。マレーシアでは5社目ですが、勤続歴は今の会社が1番長くなりました。 マレー系マレーシア人の夫&次女・三女とSelangor州Shah Alam(の僻地)に暮らしています。(長女は結婚後、職場そばに居住) かなりの頻度で近所の猫が登場。

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